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2011年7月19日 (火)

九州な失言大臣をあえて擁護する

今から書く「九州」とは、私が生まれて18年を過ごした佐賀県西部及び長崎県東部(佐世保圏)の極々一部かもしれませんよ、という断りをしたうえで。旧聞ながら、九州な失言大臣をあえて擁護する話。

「やれよ」「しろよ」復興相発言
まずは直近、ドラゴン松本こと松本龍復興相の発言。威丈高で上から目線の物言いが世間から総スカンを食らったのだと思う。

九州で「しろ」に当たる言葉は「せろ」。例えば、同級生数人で飲んでいたとする。お開きが近くなった時、誰かが仲間の一人を指差し「わいしょ、会計ばせろ」と言ったとする。これを標準語にそのまま訳すと「お前、会計をしろよ」。かなり上から目線で、いじめっ子といじめられっ子の関係なのかと思うかもしれない。ところがどっこい。指を差された側はその相手に向かって「わいしょが会計ばせろ」と言う機会が与えられる。これを標準語に訳すと「お前こそ会計をしろよ」。

「せろ」は命令形なのだけど、同列の立場同士でも使う。ニュアンスとしては「君、会計をしてくれないかなあ」「え? 君こそ会計をしてくれよ」。もし、復興相発言の「県でコンセンサスをとれよ」が九州な言葉を頭の中で標準語に訳したのだとしたら「県でコンセンサスばせろ」。ニュアンス的には「県でコンセンサスを取ってよね」ぐらいな感じ。「九州は語尾が荒い」というのは粗い説明だと思うけど、復興相が言わんとすることは分からなくもない。

「原爆しょうがない」防衛相発言
久間章生防衛相がやっちまった「原爆しょうがない」発言。「しょうがない」を九州な言葉に訳すと「しょんなか」。字面は似ているけど、標準語とはニュアンスが違う。「しょうがない」が「そういう結果になっても仕方がない」というニュアンスに対し「しょんなか」は「そういう結果になってしまったことを悔いても仕方がない」という達観に近い。

例えば、高校野球の予選決勝。あと一人アウトを取れば、甲子園に行ける。そこにライトフライが上がった。右翼手は「これを取れば甲子園だ」と思った瞬間、イージーフライを落としてしまう。あ! 甲子園に行けるはずが、一転してサヨナラ負け(このプレーは「あぶさん」参照のこと)。しょぼくれてベンチに戻る右翼手に、ナインが掛ける言葉は…

ここで「しょうがない」と声を掛けると「お前がライトフライを落球するのは仕方がないよ」というニュアンスになり、右翼手を余計に落ち込ませてしまう。ところが。九州なナインは(←九州だけにナインだってば)「しょんなか」と声を掛けることがある。英語でいう「ドンマイ」に近い。

「原爆しょうがない」発言の前後の言葉をあらためて読むと、罷免されても「しょうがない」とは思うけど、久間大臣が頭の中で「しょんなか」という言葉を訳したのだとしたら、世間一般の受け止めとは若干ニュアンスが違うと思う。

子どもの名に「しんのすけ」
これは大臣の発言ではないけれど。会社の先輩と飲んでいた時の話。私が佐賀出身だと言うと、先輩の奥さんが久留米だという。こりゃまた奇遇ですなあと話が盛り上がり。ふとしたことから、子どもの命名の話になった。子どもに「しんのすけ」という名をつけようとしたら、九州の義父母が猛反対したという。理由を聞いても教えてくれない。あれは何だったんだろう、と真顔でおっしゃる。

私はおかしくて、爆笑してしまった。先輩はそれでもポカン顔。九州で「しんのす」は「尻の穴」のこと。「しんのすけ」は「尻の穴の毛」となり、ある種「悪魔君」と名付けるより罪深い。Mankovitchという名の野球選手が今でも日本で語りぐさとなったり、ユーリ・アルバチャコフが「海老原」の名を嫌ったのと似ている。

昨今「しんのすけ=クレヨンしんちゃん」を思う人が多いらしく、ネットで「しんのすけ からかい」で検索すると、出るわ出るわ。けど、九州な人が「しんのすけ」で思い浮かべるのは、クレヨンしんちゃんではないのよね。ちなみに、九州で過ごした18年間「しんのすけ」君には一度も会わなかったけれど、本州に来てたまに会う。私が名刺をもらって「しんのすけ」さんに、つい微笑んでしまうのは「にこっ」ではなく「にやっ」なので。

そんなこんな。私が(自覚はしていないけれど)「言葉が荒い」「行儀ができてない」と言われてしまうのは、九州なヤツだからでして。こういう「九州だから」で済まそうとするのが、火に油を注ぐ気がしなくもない。せんでもなか。

あ、そうそう。「私も九州ですけど、そんなニュアンスはありません」系のコメントは、なるべくマイルドにしてくださいな。私は言語学者でも、日本全国アホバカマップを作ったプロデューサーでもないんで。

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